とぼとぼの帰り道
かけめぐる自己嫌悪、じっとりと冷や汗。
またやってしまった、正門を出て数メートル、やっとふりかえる5分前。
帰りしな、下駄箱で偶然会ったプレセア。
「帰るところ?遅くまでおつかれ、今日はなにやってたの?」くらい、すらすらと言ってみせたかったのに、かんじんなとこでいつだってへまをする僕の口。代わりに話しかけたのはミトスだった。
「プレセア、ジーニアスと知り合いだったの?」
「はい、入学試験のとき、席がとなりだったので」
「そうなんだ、えっと、今日は美術部のいのこり?」
「そうです。クラスの方に顔を出していたので全然進んでいなくて」
なんなんだ、とおもった。気がつくと発展している会話、おいてかれた僕。掠れる声でミトスに聞いた。
「あの・・・プ、プレセアと、どういう・・・・?」
きょとんとしてから、美術部でいっしょなんだとこともなげにミトスは言った。納得すると同時に、ちいさくくすぶる嫉妬心。(放課後無条件にプレセアと一緒にいられるなんて、なんて、なんてうらやましい・・・!)
緊張と驚愕と嫉妬、混ざり合って混乱に口を閉ざしていると、世間話を終えたプレセアは、クラスの方の用事があるからとさっさと行ってしまった。(ああ今日もまったく話せなかった!)
ミトスに呼ばれてようやくのろのろとふりむく。プレセアといともかんたんに話してみせたミトス、じわり、渦巻くような暗いきもち。(ミトスは友だちなのに、)どうかしたのとのぞきこむ顔を、おもわず押しのけてしまった。どすん、重い音、しりもちをついたミトス。
おどろきに見開かれた目に、湧き上がる罪悪感。いそいであやまって助け起こしたけれど、ミトスはなにもいわなかった。
そうして正門でバイバイと言うまで会話はなかった。
ああミトスにわるいことをしてしまった!(つまらないやきもちで友だちを突き飛ばすなんて!)
プレセアとも結局まったく話せなかった僕、なんて情けない!(ほんとうはずっと、文化祭でいっしょに回ろうと、誘うつもりだったのに!)
じんわり、熱い目蓋は友だちへの罪悪感からか好きな子に見せてしまった醜態からかそれとも自己嫌悪からか、わからなかった。
通り過ぎる人が目をふるわせた僕をちらりと見ては歩き行く。ぎゅうと拳をにぎった。
(ああもう夕陽のばか!いつまでも照らしてるんじゃないよ、さっさと夜に飲み込まれちゃえ!)