反抗期アイロニー



現代パラレルです。苦手な方ご注意です。





「ロイド、ね、起きてっ」
「ぅ、ん・・」

10回呼んで5回はたいてようやく重たい重たい目蓋が上がる。もいちど頭をぺしりと叩けば、不機嫌そうに幼馴染は顔を上げた。

「・・・なんだよ、おれ今日は6限目まで寝る予定なんだけど、」
「もう6限はとっくに終わったよ!」
「ふぇ、」

慌てて起き上がって周りをきょろきょろして、すでに人の少ない教室を見回してやっとロイドは現状に気がついたらしい、ポケットから携帯を取り出してあたふたしている。

「う、わ、新着4件とか、まじかよ、うぇ、ゼロス切れてるよこれ・・・!」
「はいはい切れてる俺さまが来ましたよ、っと」

のし、と、寝癖のついた髪に載せられた伸び切ったセーター。(あーもっ、こういうだらしないところが僕は嫌いだっ!っていうか他クラスのくせに勝手に入って来んなっ)ロイドがおどろいてぴょんと上を向いた。

「わあっ!ぜぜゼロスごめん俺1限からずっと寝てた!」
「んなこったろうと思った。ロイドくんたらお昼も来ないからさあ、おんなじクラスの女の子と一緒にお弁当食べちゃったじゃないのよ」
「えっうそ!」
「うんまあ嘘だけど」

はあぁ。ロイドが心底ほっとした顔で息をつく。頭上の腕にしがみついて見上げて、ごめんなとまた言った。いいのいいのとほっぺたを撫でるやらしい手にむかついて、っていうかいいかげん存在を無視されているのにむかついて、ロイドの肩をたたく。

「ロイド、5限寝っぱなしだったから、数学の教師がプリント置いてったよ。今日中に出さないと成績やばいって言ってた」
「げ、まじかよ何でフォローしてくんないんだよジーニアス、」
「できるかぎりしたよっバカロイド!5枚を3枚に減らしてやっただけ有難いと思いなよね!」
「1枚しか減ってないじゃないか」
「2枚だよ小学生からやり直して来い!」
「あっそっか」

めんどくせえなあと頭をかく幼馴染に歯軋り。(ああ何でロイドのマイペースはいつまでも変わらないんだろう・・・)

ロイドの髪を撫で回していたゼロスが指を止めた。

「ロイドくんなに、数学?」
「んー、俺せんせーにきらわれてるからさ、すぐ課題出されるんだよなあ」
「嫌われてる?そりゃまたなんで」
「・・・ロイド、数学はほとんど寝てる上、テストで二桁とったことないから」
「あ、そりゃ救いようがねえわははははは」
「そうだよなははは」
「ロイドは笑ってる場合じゃないでしょ!」

そりゃそうだはははとロイドは笑う。それから机の上に置いてあったプリントを無造作につかんで、大きめのそれを2つ折りにすると、机のわきの鞄にてきとうにつっこむ。

「え、あの、ロイド、やんないの?」
「だって今日ゼロスとデートだし、」
「いやそういう問題じゃなくて、」
「あ、どこ行く?俺ミスド食いたい気分」
「えーじゃあどうしようかな、「いやどうしようかなじゃなくてプリントをやってから行きなよ」

ロイドが心底面倒くさそうに僕を見た。そうして、別にいいじゃんか進級できなくても死ぬわけじゃないし、と口をとがらせて言う。(ああ、幼馴染が反抗期に入ってしまった!)

僕が頭を抱えると、バカがやっと事の重大さに気づいたらしく、そんなにやべえの、とぽつりと言う。ロイドがのほほんと、やばいんじゃないのと言うのがどこか遠くに聞こえた。すると、赤毛のバカが言う。

「じゃ、数学、やってから行くか」
「え!なんで?」
「だって危ういんでしょ、進級。もうすぐテストもあるし。・・・・それともロイドくんは、俺さまと一緒に進級したくねえの?」
「え」
「だってこのままだと来年はちがう学年だよね、ロイドくんが後輩なんて設定も俺は萌えるからいいけど、ロイドくんはそれでいいの?」
「い・・いやだっ、そんなの、」
「進級したい?」
「ものすごくしたいです!」
「じゃ、がんばれるよね」
「おう!」

勢いよくプリントを取り出して、シャーペンをカチカチする幼馴染。その隣の席を陣取ってにやにやと見つめるバカ。



・・・・・・・・・・あ、そういう、こと。うん、うん、わかった。そうだよね、僕じゃまだよね、うん。

先帰るねと声をかけたけど、あのアホが答えるわけもなし、ロイドは必死に数字の羅列を目で追っているせいで返事もしなかった。(僕が何度まじめにやれと言っても1度も聞いたためしがなかったのにね!ねえ泣いていい?)

教室を出ると、1コ正解したらちゅーしてあげるね、えっほんとに?なんて会話が追撃のボディブローを喰らわせる。あれおかしいな、目の前が霞んできたよ、ああ塾に行ったらプレセアに愚痴ろう。











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