ぷち・ジェントルマン

ダイクの大きな手ががしがしとロイドの髪を拭くのを、コレットはまるい目いっぱいひらいて、ふしぎそうにみつめていました。
元気に動きまわるタオルのむこうの目に気づいて、ロイドは首をかしげました。

「どうかしたのか？コレット、」
「ロイドの髪、サラサラでとってもキレイなのに、どうしていつもつんつんしてるの？」
「え、あ、えー･･と、」

ロイドは言葉につまりました。だれにも言わなかったけれど、それには理由がありました。
とがらせているとちょっとはダイクに似るから、それから、小さい頃とおんなじ髪型でいたら、いつか血のつながっているお父さんに会ったとき、お父さんが気づくかもしれないとおもったからなのです。
けれどなんだかそんな理由は子どもみたいで、――実際、ロイドはまだ子どもなのですが、――ロイドはわざと胸を張って言いました。

「いいおとこってのは、ちょっとくらいつんつんしてるもんなんだぜ！」

お、わかってるじゃねえかロイドと、ダイクが豪快にわらいます。コレットはそうなんだすごいと目をきらきらさせました。ロイドはちょっとふくざつなきもちでほほえみました。

「よし、しめえだ、行っていいぞ」

タオルが取られ、ダイクの許しが出て、ロイドはまるいイスをぴょんと飛び下ります。小さな風に暖炉がパチリと音を立てました。ロイドは先に髪を拭いてもらって待っていたコレットの手をとって、二階に行こうと元気に走りました。夜ははやく寝るんだぞと背を追う声、ロイドはふりむきます。わかってるよ！返事だけはいつも素直なので、ひとり残されたダイクは苦笑しました。

コレットがお泊りに来るのはずいぶん久しぶりです。コレットはサイセイノミコサマなので、コレットのおばあさまがなかなか許してくれないのです。今日久々に来られたのは、お父さまが風邪を引いて、コレットに移ったらいけないからでした。

理由はどうあれ、ロイドはおさななじみが泊まりに来たのをとてもよろこびました。

自分がつくった木彫りや細工はぜんぶ見せてあげました。コレットがかわいい！キレイ！と言ったものはなんでもコレットにあげました。

おやつも二人で分けました。ひとつのこったクッキーも半分こして分けました。

ジーニアスといっしょのときにはなかなかできないひみつのはなし――じつは昨日リフィル先生の机にウサギを入れたのはロイドなのだとか、そういう、とてもひみつのはなしです――もたくさんしました。コレットはロイドがおおげさに身振り手振りをつけて話すのをとてもよろこんで、いっぱいいっぱいわらいました。

ばんごはんのドワーフびっくり鍋も、たくさんおかわりしました。ブレスレットの当たったコレットはとってもにっこりしました。

久々にダイクとロイドとコレット三人で入ったお風呂はお湯がザバァとあふれでて、ダイクは大きな声でわらいました。ロイドとコレットも負けじとわらいました。家が揺れてしまいそうなほど、いっぱいいっぱいわらいました。ノイシュがむこうでウォォンと寂しそうに鳴いたのが聞こえたので、明日の朝起きたらふたりでご飯をあげようねとロイドとコレットは約束しました。

コレットの泊まりに来た夜は、いつもロイドのベッドにふたりでくるまっていっしょに眠ります。
自分よりすこし小さくてやわらかいコレットの手をにぎって、昼間はできないひみつのひみつのはなし――昼間するのより、もっともーっとひみつのはなしです――をしながら寝るのが大好きでした。

だから今日もロイドはそうやって寝るつもりでした。けれどどうしたことでしょう、二人で毛布にもぐりこむと、今夜はいつもよりもずうっと目蓋が重いのです。つないだ手もなんだかいつもよりあったかくて眠さを誘うので、つらいのをこらえながらなんとか目を開けると、コレットもなんとか起きているようすでした。たぶん二人ともおんなじ気持ちなのだとロイドはわかりました。ほんとはもっと起きていたいけど、昼間はしゃぎすぎたせいで疲れてしまったのです。

こういう風にどうしようと思ったとき、ロイドはいつもダイクの言葉をしまった頭のひきだしの中を探します。ダイクは大事なことをいっぱい教えてくれるからです。今日もダイクのひきだしの隅、答えは入っていました。

「コレットおやすみ、明日もいっぱいあそぼうな、」

ロイドがそう言うと、コレットはほっとした顔でおやすみと返しました。ロイドはにっこりして、重い目をつむりました。
女の子にはいつも気をつかってやるんだぞ、ロイド。頭の中ではダイクの声がひびいていました。

おめーらそろそろ寝る時間だぞと、いつものように言いに来たダイクはドアを開けて、二人がもう仲よく眠っているのにおどろきました。
けれど今日はいつもよりも下に響く笑い声が大きかったのを思い出して、そっと、ドアをしめました。今夜は月のキレイな夜です、きっとふたりもいい夢を見るだろうと、ダイクは思いました。

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幼少ロイコレ、いちおしです
しかし、ですます調、むずかしい･･･
ですますの練習に書いたのですが難易度が高すぎます･･･

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