エレアルーミンの少女
※ナン→カロユリです
きらいじゃなかった。いつもひとりぼっち、うずくまっていたからほうっておけなかった。だからつい手を伸ばしてしまった。
だけど突き放した。つい口をつくキツいことば、肝心なとこでいつだって素直になれなかった。何度も悲しそうな顔、させた。
ほんとはわかっていた。対峙するたびあたしは置いてかれていたんだ。あっというまに追いついて追い越して、ずっととおく、とおくに行ってしまっていた。
ちょっと前まであたしのうしろに隠れてなにかあればすぐに逃げ出していたくせに、ちっぽけな臆病者だったのに、気がついたら立派な男の子になっていた。首領に堂々と物言うカロルなんて誰が想像しただろう。男の子はずるい、女の子よりずっと幼いくせに、すこし目を離せばすぐ大人になってしまう、ずるい。
久しぶりに再会してみれば、前よりずっと、ずっと背が伸びていた。ずっとずっと、かっこよくなっていた、逞しく、頼もしくなっていた。大きな敵にも負けない、逃げない、背を向けない。両足でどんと立って胸を張って、ハッキリとしゃべる、視線はどきりとするほど、つよい。
(ああ、知らないうちに、こんなに大きくなっていたんだ、)
そう、気がついたときにはもう遅かった。
石英にもたれ、傷ついた仲間を助け起こしながら、ふ、とうしろを振り向いた。近くにいるのに遠い少年は、黒髪の男の人となにか話をしていた。視線はあたたかい、遠くからでもわかるくらい。ぞわり、胸をつめたいなにかが撫ぜた。
(―――あたしだけの、だった)
うれしそうなあの笑顔も、明るいまるいひとみも、特別のあったかい視線も、ぜんぶ、あたしだけの、だった。ギルドにいたころカロルはいつもびくびくおどおどしていて、あんな顔するの、あたしの前だけだった。
けれどいつのまにか滑り落ちていた、両手のあいだから、ぜんぶ。ひどいことばかり言ったから、勝手に置いていったから、ずっと素直になれなかったから、あたしは、どれも失くしてしまった。
きちんと向き直ったときには遅かった、自覚したときには終わっていた、初恋は残酷なほどに嗚呼短かった。
唇を噛み締めて背を向ける。頬を伝った水滴がきらりと揺らめいて足元の水晶を艶めかせた。どうかしたのか、肩を貸した仲間が掠れた声で聞いた。なんでもないよと乱暴に答えて目元をぐいと拭う。うしろはふりかえらない。
(ことばとこころの距離、もっとはやく、ゼロになればよかったのに、)
そこにあの日の少年はもういない
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カロユリが大好きなので書いてみました
ナンデレの可愛さは異常