あ゛ー!濁った悲鳴、本から目を上げて二つのベッドのあいだ、絨毯に無造作に寝転がる少年を見た。
大雨でホテルに閉じ込められた暇つぶし、ついさっきまで熱心にホテル備え付けのパズルで遊んでいたのに、もうあきらめたらしい。
形の様々な木片、組み合わせて正方形をつくるパズルはてきとうに放られたまま、完成を夢見ている。パズルを埋めていく木枠を見れば、半分は組みあがっているようだった。飽きっぽいロイドくんにしてはよく持った方である。
きっと今ごろ頭の中では次の好奇心を探しているのだろうと、ぼんやり思った。俺の恋人、ときどきおどろくほどに飽き性だった。
「なあロイドくん、」
(俺にもすぐに飽きちゃうの?)
聞こうと口をひらいて、やめた。聞くだけ野暮だった。だって答えなんて決まっている、おまえばかじゃねえのと言うロイドくんの不機嫌な顔は容易に想像できた。
一年も二人で旅をしている。喧嘩も何度もしたけれど、ロイドくんが本気で俺を断とうとしたことは一度もない。もう飽きるとかそういう問題じゃない。年月というのはこういうとき信頼につながるものなのだと気づいた。
こいつは俺に飽きないし、俺はこいつに飽きない。
ロイドくんは俺が好きだ、俺もロイドくんが好きだ。
それ以上なにが要るだろう。俺は苦笑した。
呼びかけて止まった俺を、なんだよとロイドくんが見上げる。ごめんなんでもねえと、言ったのにロイドくんは身を起こした。ひょいと、猫のようにしなやか、俺のベッドに上がって、のしり、俺にのしかかる。
腹に乗られて息苦しかったし読書を止められてしまったから、なにするのととがめるように言えば俺のタンクトップに手をかけたロイドくんは平然と言う。
「え、誘ってたんじゃねえのか?」
「へ?いやそうゆうんじゃなくて、」
「そっかまあべつにいいや」
いやよくねえだろと言ったのも気にせずロイドくんはたくし上げた。ひやり、むき出しの腹が冷える。本を奪われたのを抗議の目で見たけど気づかない振り。(あーあ、真犯人が明かされるまであと一ページだったのに、)
さむい、つぶやくと、すぐあったまるからいいだろと言って脇腹を撫ぜながら、ロイドくんが身を倒した。変態め。しかしその変態を甘んじて受け入れている俺も結局おんなじようなものだから、口には出さない。ロイドくんの手の触れた後はもう熱かった。
ギシ、膝を立ててベッドを鳴かせながら、俺の上に乗ったロイドくんはちらりと窓側、目をやった。
「ん・・なに?」
「いや、宿代かかるしベッドもひとつでいいのになと思って」
「ええー?やだよ俺フロントのお姉ちゃんに怪しい目で見られんの」
「いいじゃん、ゼロスの女避けにもなって」
今度やってみるか、首筋に顔を埋めながら楽しそうにロイドくんは言う。勘弁してくれとその背中に手を回した。
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左側のロイドくんは、ちょっと強引な方が、好きです
ラタを見る感じだと、一年後のゼロスはきっともうロイドくんに全幅の信頼を置いているよね
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