「あ、ジーニアス、ゼロスのとなりじゃん、やった!」
なにがやったなのか、よく、わからない。僕が呆けているとロイドはさっさと新しい自分の席から荷物を持ってきて、替わってくれよと当然のように言った。いらっとした。
あえて替わらないでやろうかとも思ったが、僕とゼロスの席は一番前、ロイドの席はといえば、後ろから二番目で、ひとつ前には背の高い男子が座っているいわゆる、都合のいい席だったしそれに、どかなければ授業中ずっとうしろからとなりからじっとりした目線を送られることを考えたら立った方が精神的によさそうだった。
しかし席替え後、新しい席に座って僕は早々に、替わらなければよかったと後悔した。窓側の列だから、黒板が見づらいということはないのだ。ただ、壁際の一番前、対極線上のバカ二人がよく見えてしまうだけ、数Uの授業が頭に入らないだけのことで。(これは、もちろん、皮肉)
だって高校二年生の男子が教科書を忘れたわけでもないのに机をくっつけてニコニコ授業を受けているだろうか。新人のエミル先生は気づいていないがその机の下ではなにか互いの手に、指で文字を書いて密談をしているのが僕の位置からではよく見えてしまう。喋っている内容などわからないがどうせ、『ロイドくん放課後はどこに寄ろうね』だとか、『ついでにハニーんちに行きたいな』だとか、『今日泊まってもいい?』だとかに決まっている。(ああしまった公式の説明を丸々聞き逃した!)
夏風がカーテンを揺らしうなじの汗を撫ぜた。と、廊下でも窓が開いているのか、ロイドの机に置いてあった白が床に落ちるのが見えた。おそらく消しゴムだろう。何気なくそれを見ていた僕は授業中だけかけている、眼鏡をたたき割りたくなった。同時にかがんだ二人、伸ばした手と手、掠り、刹那、飛びのく。ゼロスは狼狽したような、ロイドは表情が見えないが耳を赤く染め、照れているのは見て取れた。(さっきまでずうっと触っていたじゃないかいちゃいちゃべたべたと!)
苛立ちがつのる。昔はああではなかった僕の幼馴染は高校に入って、あのアホと出会ってから人が変わってしまった!
「・・・ジくん、」
ごめん明日ゼロスとデートだからと、堂々と僕の放課後の誘いを断るようになったし昼休みはアホを交えてべたべたとお弁当のおかずを交換しているし口の端の食べかすをぺろりと舌で奪われても文句のひとつも言いやしない!一年はちがうクラスだったからまだよかったものの、二年に上がって同じクラスになってからバカップルは、大バカップルに進化してしまった!(ああもう、最悪だ、)
「セイジくん、」
放っておいてくださいエミル先生僕はたそがれているんです世の無常移り変わる友の儚さを嘆いているところなんです、高校生ならではの悲しみなんです。・・・・・って、え? エミル先生?
「セイジくん! もう、ぼーっとしてないで僕の話、ちゃんと、聞いてよっ!」
「! す、すみません!」
温厚なエミル先生に怒られてしまった。お前たちがわるいんだぞと前をみやればアホはこっちを指さし笑い、ロイドはなだめるようにその手を止めていた。
(・・・・・携帯、着拒しようかな)
+++
実は前作気に入ってたからまたつづき!
ジニたんいつもごめんね、つ胃薬
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