さいあくの一日だった。
現代文はフォシテスからこれでもかというほど愛の攻撃を喰らい一睡もできず、放課後たまたま会った二年の後輩に家庭科で作ったというマフィンをもらったはいいがそれを一年の女の子に見られてひっぱたかれた挙句わんわん泣かれ、家に帰るとロイドはいなくて出来立てのご飯もなかった。いいかげん腹が減ったのに。
厄日だと思いながら、振動する携帯をポケットから取り出す。ロイドから。
『父さんが家に帰ってくる。しばらく自宅にいる』
ああ天よ俺を見放したもうたか。自分の家だってのに、湿布の場所すらわからない。力の限りはたかれた頬がじんじんする。腹が空いても何を食べたらいいかさえ思いつかない。一度俺のマンションに寄ってからロイドは出て行ったらしく、朝食はごっそり姿を消していた。冷蔵庫を開けても俺に調理能力は皆無で食材があっても意味がない。悔し紛れに開けようと思ったワインはなぜかなくなっていた。
どうしようもなくて、とりあえずぐちゃぐちゃした思考を片付けるためにすこし寝ようとおもった。部屋のドアを開けた。ベッドは俺の頭の中にも負けず劣らずぐちゃぐちゃだった。てっきりロイドが新しいシーツに替えてくれているものだと思っていたからびっくりした。急いでいたのかもしれない、しばらく自宅にいなかったわけだから、たぶん父親をごまかすのに時間が要ったのだろう。
それにしてもベッドも使えないなんて、災難はつづくものだ。しかたなくリビングのソファに倒れこむ。窓際は西日がまぶしかった。
寝転がって覚束ない頭でぐるぐるかんがえた。
今日のロイドはちょっとひどい。洗濯もシーツもそのままで、ご飯も作ってくれなかった。いつもあんなに優秀な同居人なのに。
急いでるにしてももうちょっとなにかしらしてくれたっていいのに、俺さまは今日災難に見舞われてばかりなのに。
俺さまがいったいなにをしたってゆうんだ、意地悪ロイドめ。
(あした、学校で会ったら、文句を言ってやる)
そうおもっていたのに、それは叶わなかった。
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