爽やかな朝が台無しだ、ひどいありさまだ、ああカオスカオス。

カップラーメンとコンビニ弁当の残骸に溢れた水道を一瞥して嘆息。

同居人がいなくなって二週間が経つ。学校で話しかけようとしても無視されるし、メールで問い詰めても返事はない。

ひどく苛々する、こんなことは初めてだ。

だってロイドはいつだって俺の家にいて、いつだっておいしいご飯を作ってくれた。どんなときも俺を怒ることはなかったし詰ることもしなかった。

そのロイドが、なんだってこんな真似をする?

いくら考えても答えはわからなかった。ただひたすら苛々した。頭の中はもうずっとロイドでいっぱいで女と遊んでいる暇もなかったから、鬱憤はますます溜まっていく。

家は汚れコンビニ食には飽き精神は瓦解寸前だった。

ロイドがいなくなることが、こんなに俺を揺さぶるなんて、思いもしなかった。

ロイドがこんなに大切だったなんて、気づきもしなかった。

そばにいるのが当たり前で、近すぎてわからなかったけれど大切で、いないと不安で、なにも手につかなくて、ただ顔が見たくてそれだけのためにまじめに学校に通っている。

ロイドの残していったすこしだけ丈の短いYシャツは、ろくに洗っていないくせに何度も着たせいで、よれよれになっていた。




今日もひとことも話はできなかった。

毎日、すこしずつ、胸に鉛が溜まっていく。息苦しくて、呼吸が止まりそうだった。授業中だけ静かに聞ける、ロイドの現代文の朗読の声が唯一の支えだった。俺の出席率の向上と睡眠率の減少にフォシテスが喜んでいたがそんなことはどうでもよかった。ロイド以外のことはどうだってよかった。

ロイドロイドロイドああ声が聞きたい笑顔がみたい。病的に思いつめながら、放課後の廊下をとぼとぼあるく。

そういえばロイドの笑うのを見なくなったのはいつからだろうか。

気がついたらあんなに活発だったロイドの顔は、いつのまにか険しくなっていた。なぜだろうか。

ぐるぐるぐるぐる、

終わりない思考を繰り返しながら、玄関にたどり着く。

そのとき目に入ったのは、ずっとずっと俺の頭を占領していた張本人。正門の前、懐かしいツンツン頭。駆け寄ろうとして急いでローファーに履き替えて一歩踏み出して、足が止まる。

(・・・・・あ、)

視線の先、見知らぬ少女、金髪の。刹那、胸騒ぎが走った。ふたりはなにか話している。少女は輝くような微笑を浮かべていた。嫌な予感がした。

少女は、ロイドの手を取った。歩き出すふたり、最後にみえたロイドの横顔は、俺がしばらく見ていない、笑顔だった。



皮肉なものだ、だれかのものになってから気がつくなんて。

俺はバカだった、眩暈がするほどのバカだった。

ふらつく足でどうやって家に帰ったのかはわからない。ふと思考のもどったときにはロイドの部屋にいた。物の少ないのは、出て行くときにロイドが持っていったのだろう。本棚の隙間は物寂しかった。

くらくらする頭を押さえながらベッドに飛び込んだ。もとは客間だからお客用だったのに、もう完全にロイドのベッドになっていた。懐かしい匂いがする。鼻がつんとした。

もぞもぞと携帯を取り出して、無意識に、かけ慣れた短縮を押す。

ただ、ロイドにあいたかった